皇帝別館

鏑木しずき

鏑木しずき

(20)

T166 B88(E) W58 H85

長身グラマー極上ボディ美女

12:00 ~ 24:00

  • 割引攻略

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狂気がレントゲンに写れば③

02/25 17:56

狂気がレントゲンに写れば③

はっと我に返ると、彼女はすでにいなくなっていた。

足元に何か落ちていることに気づいて拾い上げる。
ポラロイドだった。彼女がさっき本に挟んでいたやつだ。落としていったらしい。
そこに写るのは人でも物でもなく、「闇」だった。
じっと見つめてみても何かの像を認めることはできなかった。
ちょうどカメラのレンズを手でおさえてシャッターを切ったような、そんな写真だ。
失敗したのだろうか。彼女にだけ何か見えているのか、はたまたこれを彼女が気に入っているのか、全くわからない。今まで以上に塚本さんがわからなくなっていた。
その後、二度と言葉も交わすことなく、塚本さんはふた月後に退院が決まった。
彼女の入院期間、最後の夜に当直にあたった。
準夜帯の巡回をしているとき、彼女は談話室で子供向けの絵本を眺めていた。
彼女は、こちらに気づいてくれた。
ものは言わなかったが、こちらを見やってちょこんとお辞儀をしてくれた。
けれども、最後に見たその生気のない眼は、明らかにまだ「あっち側」の人間のそれだった。
健康な体で生まれた彼女は、自ら勇んで「あっち側」に飛び込んでいってしまったのだ。
返しそびれたポラロイドを眺めてみると、その真っ暗闇とあの日の黒目の色が重なって、やりきれないような無念な気持ちになってしまう。
彼女が作り上げた精一杯の狂気が、そこに浮かび上がっているように見えてならないのだ。
狂気がレントゲンに写れば、彼女はもっと早くに救われていた。嘘を見抜いてくれる人がひとりでもいれば、きっと彼女はそれで満足だったのだ。
ある種無邪気な彼女の出任せが、彼女自身を闇に葬ってしまった。私はそれを、自業自得と責め立てることは永久にできないだろう。