
オゴトガイド見たとお電話ください!
電話 050-5448-9022
営業時間 11:00-24:00

04/16 17:16
大切なこと
15時を少し過ぎて、16時にはまだ届かない。
電車の中でも、人の気配がふっと薄くなる、あの静かな時間帯。
座っていると、目に入ったのは
海外の貴婦人、と呼びたくなるような女性。その隣に大柄な旦那さま。そばには小さな男の子と、その子を見守るお母さん。
女性は短い髪に黒縁のメガネ。
全身を紺色でまとめた、飾り気のないシンプルな装いなのに、不思議と目を引く。耳元で揺れる大粒の金のピアスだけが、静かな存在感を放っていて、その人の歩いてきた時間まで映しているようだった。
華やかというより、積み重ねられた品のよさ。歳月を味方につけた人の美しさだった。
席を譲ると、隣の旦那さまが少し身体をかがめて、カタコトの日本語で「ありがとう」と言った。よく見るとメガネはお揃いのようだ。
その言葉には、旅先の遠慮と、誰かの親切をまっすぐ受け取る素直さが混ざっていて、聞いたこちらまでやわらかい気持ちになる。
その横で、小さな男の子はずっと車窓に夢中だった。
流れていく景色に目を奪われ、時々身を乗り出しては、お母さんを少し困らせる。
でも、母を困らせる横顔がなんとも可愛らしい。
世界はまだ全部が新しくて、窓の外を流れる街でさえ冒険なのだろう。
お母さんにとっては、きっと落ち着かない数分。
それでも、こうして誰かに少し困らされる時間こそ、あとで振り返れば、いちばん眩しく思い出す時間なのかもしれない。
席を譲ったのは、ほんの小さな行為だった。
けれどその数分で、異国の品のある夫婦と、世界に夢中な幼い横顔と、少し疲れた母のやさしさに触れられた。
電車というただの移動の箱の中で、人生の断片がふっと見える瞬間がある。
今日はそれに立ち会えた気がして、席を譲ってよかったと、静かに思った??
?
鳳条 暦
<< 2026年4月

































