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06/13 10:01
雨の匂いがわかる人がいる。 まだ一滴も落ちていないのに、空気の湿り方で、風の重さで、草や土の匂いで、 あ、降るな とわかってしまう人。 それはきっと自然に対してだけではない。 人の心にも同じように雨の前がある。 いつもより少し遅い返事。笑っているのに、目だけが沈んでいること。何気ない言葉の端に混じる小さな諦めや、疲れや、距離。 気づかない人は気づかないまま通り過ぎる。 わかる人にははっきりとわかってしまう。 まだ何も起きていない。まだ誰も何も言っていない。それなのにもう空気は変わっている。 雨の匂いがわかる人は変化を読む力があるのかもしれない。 けれどそれは便利な才能というより、 少しだけ寂しい感度でもある。 人より早く気づくということは、 人より早く不安になるということ。 人より深く受け取るということは、 人より長く抱えてしまうということ。 だから、気にしすぎなのかな と思っていた時ほど、本当はずっと世界の小さな揺れを受け取っていたのかもしれない。 雨が降る前の匂いに気づくように、誰かの心が沈む前の気配にも、場の温度が変わる前の沈黙にも、自分の中の限界が近づく音にも。 敏感なのではない。弱いのでもない。 ただ縁が深いだけ。 雨の匂いがわかる人は、きっと人生の中でも何度も、もうすぐ何かが変わると感じてきたに違いない。 そしてその直感はいつも少し遅れて現実になる。 だからこそその感度を責めたくない。 気づいてしまうことは、疲れることでもあるけれど、美しいものを誰より早く見つける力でもある。 雨の前の匂い。季節が変わる直前の風。 人が泣く前の沈黙。別れが近づく時の言葉にならない距離。 そういうものに気づける時は世界と少し深いところでつながっている。 ただ受け取りすぎた日は、折れてしまいそうな日にはちゃんと自分にも傘をさしてあげたい 鳳条 暦
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