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09/04 09:30
信じなくてもいい後編
考えてみれば私たちは、いつから 生きるためには意味が必要だ と思うようになったのだろう。
何のために生きるのか。何者になりたいのか。
人生で何を成し遂げたいのか。
そういう問いに答えられる人はきっと強い。
でも答えられない人の人生に意味がないわけではない。
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むしろ人生の大部分は、そんな大きな意味とは関係のない時間でできている。
今日食べたものがおいしかった。
帰り道の風が少し気持ちよかった。
眠る前に布団の中が暖かかった。
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そんなことは、人生を劇的には変えない。
明日を生きる壮大な理由にもならない。
でもその瞬間だけは確かに、
「今日、生きていて悪くなかった」と思わせてくれる。
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人生には、それくらいの理由しかない日があってもいいのではないだろうか。
もしかすると私たちは、「生きる意味」と「生きる理由」を混同している。
意味は分からなくても、理由なら今日の中にいくつかある。
一日が終わる。翌朝になったら、また一日だけ生きる。
そうして意味も分からないまま何年か生きたあと、ある日振り返って、
あの時間があったから、今ここにいるのかもしれない と思うことがある。
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人生の意味というものは、最初から用意されていて、それを見つけた人だけが生きられるものではないのだと思う。
生きている途中では意味の分からなかった時間に、後から意味が宿ることがある。
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だとしたら意味があるから生きるのではなく、生きてしまった時間にあとから意味を与えていく。
そんな順番でもいい。
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現実と向き合う という言葉についても、少し考えたい。
向き合う と聞くと、何かを克服しなければならないような気がする。
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考えたところで答えの出ないことだってある。
それなら解決しないまま一緒に生きることも、ひとつの向き合う なのではないだろうか。
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そう認めたまま、それでもご飯を食べ、お風呂に入り、仕事をして、眠る。
傷を克服した立派な自分にならなくても、傷を持ったまま生活している。
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それは敗北ではない。
むしろ現実というものはたぶん、そうやって生きることなのだと思う。
そしてここまで考えると、幸せになる ということさえ、人生の最終目的でなくてもいいような気がしてくる。
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幸せになりたい。それは自然な願い
けれど人生には、自分では選べないことがあまりにも多い。
生まれる場所も、出会う人も、誰かの気持ちも、突然起きる出来事も、完全には選べない。
幸せだけを人生の成功条件にすると、人生の評価を自分では支配できないものに預けることになってしまう。
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だから幸せになることより先に、
自分の人生を自分へ返していくこと。
それがあるのかもしれない。過去は選べない。
でも今日、誰と会うかは少し選べる。
そんな小さな選択を、自分の手元へ取り戻していく。
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人生を取り戻すというと、大きな決断を想像するけれど、本当はそういう些細な選択の積み重ねなのだと思う。
過去に人生を壊されたと思う日があったとしても、今日のすべてまで過去のものにする必要はない。
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過去に囚われていてもいい。
未来に希望がなくてもいい。
無理に前向きにならなくてもいい。
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ただ、過去だけに今日を決めさせないこと。
未来だけに今日の価値を預けないこと。
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それだけは忘れたくない。
人生を長い物語として眺めると、苦しくなることがある。
私は何者になるのだろう。この先どうなるのだろう。最後には幸せになれるのだろうか。
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そんなときは一度、人生を物語として考えることをやめてもいい。
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今日は今日だけでいい。
そして明日になったら、また明日のことを考える。
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それは逃げているように見えるかもしれない。
でも人間の一生を最後まで細かく分解していけば、結局そこに残るのはそういう名前もつかない一日一日なのだ
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だから、希望があるから今日を生きる
という順番でなくてもいい。
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今日を生きていたら、いつか希望と呼びたくなる何かに出会うかもしれない。
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それくらいでいい。
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未来を信じなくてもいい。
未来に期待できなくてもいい。
ただ未来の自分が何を好きになり、誰に出会い、何を大切にしているのかを、今の自分が全部決めてしまわないこと。
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今の悲しみだけを材料にして、まだ存在していない日々に判決を下さないこと。
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希望というのは、もしかすると きっと幸せになれる と信じることではない。
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まだ分からないものを、分からないまま残しておく力なのかもしれない。
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だからせめて、知らないものを知らないままにしておく。
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ただ未来を諦めることと、未来を知らないことは、同じではない。
知らないなら、まだ決めなくていい。
その小さな余白だけを残して、今日を生きていけばいいのだと思う。
鳳条 暦
<< 2026年9月

































