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鳳条 暦

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珊瑚

06/03 09:30

珊瑚

『珊瑚』
人間がなぜ危険を承知で美しいものに惹かれるのか。

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新田次郎といえば、まず山岳小説の作家という印象が強い。
人間が山に挑み、自然の厳しさの前で試され、時に敗れ、それでもなお何かに引き寄せられていく??そのような物語を描く作家のイメージでした。
珊瑚の舞台は山ではなく海。
山ではなく海であっても、新田次郎が描こうとしているものは変わらないのだと思う。
それは人間が自然の中でどこまで生きられるのかという問いであり、同時に人間はなぜ危険な場所へ向かってしまうのかという問いである。
この物語の核心は金になるから珊瑚を採るという単純なものではなく、
登場人物たちは珊瑚そのものの美しさ、海の底に眠る未知の輝き、そしてそれを自分の手で引き上げることにどこか抗えない魅力を感じている。

そこには山に登る人間がなぜ山に登るのか と問われる感覚に近いものがある。
合理的に考えれば危険で割に合わない。命を落とす可能性すらあるけれど、それでも向かってしまう。

珊瑚は彼らにとって単なる商品ではなく、人生を賭けるに値する美の象徴だったのではないか。
珊瑚を読んで感じるのは、珊瑚という存在の皮肉である。
珊瑚は美しい。装飾品となり、芸術品となり、人を魅了する。けれどその美しさの裏には危険な海に出た人間たちの命がある。

私たちは美しいものを見るとき、その裏側にある労苦や犠牲を忘れてしまうことがある。
しかし珊瑚はその美の裏側にある人間の生と死を見せてくる。

美しいものはただ美しいだけではない。
そこには時に人間の執着や犠牲が沈んでいる。
だからこの作品の珊瑚は単なる宝石ではなく、人間の欲望と自然の残酷さが結晶したもののように感じられる。

山岳小説の新田次郎が海を書いた、という点もとても面白い。
山と海はまったく違うように見えるけれど、どちらも人間を試す場所である。
山では天候、雪、岩壁、寒さが人間を追い詰める。海では波、風、潮、嵐が人間を飲み込む。

どちらにも共通しているのは人間が自分の力を過信した瞬間に、自然がその小ささを思い知らせるということだ。

それでも人間は向かっていく。
山へ。海へ。
危険の向こう側にしか見えないものがあると信じて。

この物語の魅力は難解な心理描写ではなく、まっすぐな人間の行動によって感情が伝わってくるところにもある。
現代小説のように内面を細かく分析するのではなく、男たちは海へ出る。惚れる。争う。夢を見る。死に近づく。
だから読みやすいのに軽くはない。
余計な説明が少ないからこそ読後にずしりと残る。

珊瑚は海洋ロマンであり、青春小説であり、歴史小説であり、災害文学でもある。
そして人間が何かに魅入られて生きることの物語。

珊瑚に魅入られる。海に魅入られる。
愛に魅入られる。自然に敗れると知っていても、人間は何かに魅入られずには生きられない。

しかし人間そのものが1番切なく、1番美しいと
そう思わされる時もある。

素敵な本を教えてくださりありがとうございます???


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