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10/21 09:45
宵の明星3
理由
港に着いたとき、花火はもう終盤だった。人混みの端で、彼女はひとりで空を見ていた。
息が切れて、うまく言葉が出なかった。
「昨日のは、なし」
彼女は目を丸くして、それから少し笑った。
「正しい人が、間違えに来たの?」
「うん。たぶん、これからも何回も間違える。でも、君のせいで間違えるなら、それがいい」
彼女は空を見上げたまま言った。
「この世界、生きていくにはちょっと悲しすぎるよね」
僕には、その言葉を打ち消すような上手い返しはなかった。だから、知っている言葉をひとつだけ、何度も繰り返した。
好きだ。好きだ。
最後の花火が開いて、消えた。煙の向こうに、宵の明星がまだ光っていた。
正しさは、損をしないための道しるべだ。
でも、どこへ行きたいかまでは教えてくれない。
あの夜、僕は初めて、正しい答えより「理由」を選んだ。間違いだらけの遠回りでも、その先に君がいるなら、それは迷子ではない。
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鳳条 暦
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