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鳳条 暦

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    クルビット

    時計で測れる時間だけを生きているのではなく心の内側で流れ続ける生きた時間を生きている 心の内側を流れる時間は、単に思考している時間だけではないと思う。 広義であれば、記憶、感情、予感、後悔、願い、痛み、夢、愛着、喪失感が混ざり合って流れている時間。 外側の時間が何時何分、何日、何年 と進んでいくものだとしたら、内側の時間は、 その人が何を感じ、何を抱え、何をまだ終わらせられずにいるかによって伸び縮みする時間 なのだと思う。 同じ時間でも、心の中ではまったく違う重さを持つ。 私たちは物理的な時間の中にいるようで、実際には意味の濃度によって変化する時間を生きている。 心の内側を流れる時間は、思考の時間でもあるけれど、おそらく思考だけでは足りていない。 思考よりもっと前にある、 感じてしまうような、忘れられない時間 まだ癒えていない、何度も心の中で再生される時間に近い。 誰かに言われた一言が、何年経っても心の中で響き続けることがある。 外側の時間では過去なのに、内側ではまだ現在として生きている。 傷ついた記憶も、憧れも後悔もそう。 時計の上では終わった出来事なのに、心の中ではまだ終わらない。 私たちの内側には、過去がただ保管されているのではなく、今も動いている過去がある。 フランスの哲学者ベルクソンは、時計で区切られる時間とは別に持続 という考え方を語る。 これは、時間を一秒、一分、一時間のように切り刻むのではなく、心の中で途切れずに流れているものとして捉える考え方。 音楽は一音一音をバラバラに聞いているわけではなく、前の音の余韻が次の音に重なり、全体としてひとつの流れになる。 私たちの心の時間もきっとそれに似ている。 今の自分は今この瞬間だけでできているわけではない。 幼い頃の記憶、昨日の疲れ、誰かへの思い、未来への不安、まだ言葉にできない願いが全部うっすら混ざって今 を作っている。 今とは本当は一点ではない。 過去の余韻と未来への予感を含んだ、厚みのある現在。 時計で測れる時間は誰にとっても同じように進む。でも心の時間は人によってまったく違う。 傷ついた人の時間は何度も過去へ戻り、希望を持つ人の時間は未来へ伸びていく。 内側の時間は時計の時間より長い のかというと、少し違う。長い場合もあるし短く感じる場合もある。 けれど確かなのは時計の時間よりも深いこと。 一瞬なのに人生を変える時間があれば、十年経っても何も変わらない時間もある。 逆にたった一言で、自分の中の何年分もの孤独がほどけることもある。 心の時間は量ではなく密度。 人間を年齢や経過時間だけで見てはいけない。 外側から見れば何もしていない時間でも、内側では何かが熟していることがある。 悩んで、迷っている時間。何度も同じことを考えて、それでも答えが出ない時間。 一見、停滞に見える。しかし心の深いところで何かを消化し育てている時間なのかもしれない。 出来事が心の中で意味へと変わっていく時間。 時計は時間の長さを測る。けれど心は時間の重さを覚えてくれているのだろう。 ヨーソロー 鳳条 暦

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